農家が8割減る日 主食はイモ、国産ホウレンソウ消滅? - 日本経済新聞


農家が8割減る日 主食はイモ、国産ホウレンソウ消滅? - 日本経済新聞

 

「半農」増やし、みんなで農業 鈴木宣弘・東京大教授(農業経済学)

 

世界の人口は増えていき、食料不足が大きな課題となっている。中国は14億人を1年半食べさせるだけの備蓄を確保しようと、世界中から食料を買い集めている。対する日本は1カ月半の備蓄しかない。
政府は2030年度に食料自給率を45%に高める目標を掲げるが、今のままでは下がっていく。これまでも5年ごとに目標値を設定しているが、工程表すらつくったことがない。農家の平均年齢は70歳近くになっており、あと10年もすれば多くの農村は崩壊する。
これまで日本は、農業の将来にあまり目を向けずに工業化を推進してきた。その結果、食料は海外に依存するようになってしまった。
今回の食料・農業・農村基本法の改正では、農家が減って輸入も難しくなるため、食料安全保障の確保へ抜本的な策を打ち出すと思った。だが、自給率をこれまでよりも軽視しているような内容にみえる。
改正案で示した農業法人のさらなる効率的な生産などは必要かもしれない。だが米国やオーストラリアのような広大な農地は少なく、効率化は現実的ではない。例えば、他の仕事をしながら農業にも携わるような「半農」の形態を増やすということも必要だろう。
極端に言えば、自分たちで食材を作るしかない。農家が地域住民に農作業を教え、耕作放棄地も使って身近な地域で生産から消費までの循環型の仕組みをつくりあげる。そうした意識を国民が持つ必要がある。

 

藤元健太郎D4DR 社長
 

私はプランティオというアーバンファーミングを推進するスタートアップの役員もしているが,都会でも葉物野菜は自分で食べる分であれば個人でもコミュニティでも十分育てられる。自分が必要な量だけ自分で育てる価値観を普及させればエネルギーのグリッド化と同じ流れで農業の地産地消と分散化を推進するだろう。分散化はF1種のような工業的効率化から多様な伝統野菜を復活させ,農業のダイバーシティも推進させる。またAIの普及でこれまでのホワイトカラーの仕事はかなり効率化され,おのずと超人手不足な一次産業を中心とするブルーカラーへのシフトも進み,都会と地域の多拠点生活をするような半農従事者も増加するのではないだろうか。
2023年9月17日 10:29
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福井健策骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士
 

厳しい離農と輸入難の見通し、想定される「将来の献立」を3日試してみる体当たり、フードロスの戒めに、国民「半農」の勧めと、充実した記事ですね。いずれも全く同感です。 一点、国連でも不可避とされる視点を加えるなら、「肉食の見直し」ではないでしょうか。牛肉は1kg生産するのにとうもろこしなら11kg、豚肉なら6kgと大量の水を要するとのデータは著名です。現在の膨大の飼料にあてる農地と水と生産力は、日本はおろか世界にもどう考えてもありません。 米、豆類、イモ、野菜や無理のない魚介のおいしくて豊かな料理法を、私たちは先祖からたくさん受け継いでいます。食生活の前向きな見直し。結構いいかもしれませんよ。
2023年9月17日 8:33 (2023年9月17日 8:35更新)
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志田富雄日本経済新聞社 編集委員
 

戦後、なるべく多くの農業者が農地を持てるようにした農地改革は日本の小規模な生産基盤を作りました。こうした状態を維持し、再び農地が集約しないように固定化した規制が農地法です。 規制改革によって農地がリースできるようになり、農業法人が大規模化できる道筋がある程度できました。農家の減少はしばしば悲観的な見方でとらえられますが、生産規模を増やし、農業の生産性を引き上げるチャンスにもなります。 米国や豪州のような大規模化は無理でしょうが、農業法人がいくつもの生産地を請け負う体制も考えられます。少なくとも漁業権制度に阻まれる沿岸漁業より展望は開けています。
2023年9月17日 15:39
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柳沢幸雄北鎌倉女子学園学園長・東京大学名誉教授
 

都会の中学生、高校生の将来の職業選択として、農業が選択肢になることは極めて少ない。農家出身でなければ、就農する機会が限られているのが現状であり、その結果として必然的に後継者不足となり、放置された農地が増える。  小作農を解放し、自作農化した戦後の農地改革に匹敵する、令和の農地開放政策を立案し、実施に移すべき時期だと思う。成り行きを見守ってから、行動に移すという通常の手段が取れる時間的余裕はない。
2023年9月17日 9:52 (2023年9月17日 11:29更新)
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