LGBTと日本の漫画 三浦小太郎

メルマガ(経営科学出版) 2023/6/22

本メールは、
評論家、政治活動家である
三浦小太郎 先生の
メールマガジンをお送りいたします。

 

【引用開始】
LGBTについて、法案についての議論もそれは必要でしょうが「リボンの騎士」に始まり「風と木の詩」を経て「ストップ!ひばりくん」に至る、日本の漫画における偉大な達成をもう少しだれか語ってくれないだろうか。

正直私はこの手の作品は苦手な「差別主義者」なので今一つ語れないのですが、「ストップ!ひばりくん」は見事な傑作だったと思います。

あのひばりくんは果たしてLGBTならどれに入るのか?いや、どこにも入らない気もする不思議なキャラですね。

それ以後の漫画を私は殆ど追っかけてないですけど(ちなみに私は昭和35年生まれ)若い人たちはもっとたくさんの作品を上げられますよね。

私は漫画表現が自由だったから差別が全くなかったなんて言う気は全然ない。

ただ、これらの作品が、少なくともお金を出せばだれでも自由に読める場所においてあるというのは、日本社会の自由な一面だとは思います。

リボンの騎士」は宝塚が確かにモデルでしょうが、、単なる女性の男装とは設定が違うでしょう(宝塚のイメージをそのまま表しているのは「ベルサイユのばら」で、フェミニズムとはいえるかもしれないけどLGBTとはちょっと違う)サファイアって、女性として生まれてくる赤ちゃんに、天使がいたずらをして男の心を飲ませてしまう、そして、神様がそれと知らずに女の心を与えることで、両方の心がやドルという、これは今考えてもすごい発想でした。

繰り返しますが、日本に差別や偏見がないなんてきれいごとは言わない。

私自身が差別もするし偏見もある。

でも、それが欧米の一部のヘイトクライムや、さまざまな宗教原理主義、そして中国政府の言論弾圧と比べて、より深刻だとは私は全く思えない。

中国では今、ボーイズラブの漫画は禁止。

週刊モーニング4 5月11・17日合併号』に、『日本の月はまるく見える』という作品が載っています。

簡単に言えばBL、同性愛の男性を描く漫画を描きたい中国人漫画家の物語。

政府の規制でどうしても「友情もの」以上の表現はできない。

作者は、編集部から、ボーイズラブを描きたいのならうちでは載せられないと言われ、自分の唯一の表現の場を奪われるような気持になります。

作者は絶望的な気持ちを語ります。

「好きなシーンを描けないなら何の意味もないよ」「あの頃に戻りたい。好きな漫画を好きなように描いて、日本のPIXIVにアップしていた頃」 しかし、今はネット規制で書き込みもできず、時々つながっても、すぐにまた当局によりブロックされてしまいます。

日本の出版社から、連載を検討してみないかというメッセージが来ますが、それに返信しようとしてもまた途切れてしまう状態。

しかし、彼女の背中を押してくれたのは、少女時代、彼女の作品を馬鹿にして全否定していた同級生でした。

彼女は、日本に表現の場を求めて旅立ちます。どんな表現であれ「自分の好きなことを表現できないなら何の意味もない」ことは全く同じ。

中国に限らない、世界のどこでも、この作者のように思っている、悩んでいる人はたくさんいるはず。

こういう人たちが表現の場を見つけられる、日本は絶対そういう国であってほしい。

日本の古典には「とりかへばや物語」というすごい作品がありますよね。

LGBT理解増進、というのなら、ここに挙げた漫画、それと「とりかへばや物語」(田辺聖子さんのいい現代語訳も出ています)を全部読ませればとりあえずいいんじゃないでしょうか。

日本ならではの理解増進ですよ。

そして、読むのは苦手だという人には、アニメ『君の名は』でもいいかも。

あの傑作も、現代版「とりかへばや物語」とも言えますから。

【引用終了】


評論家 三浦小太郎 Facebook https://www.facebook.com/kotaro.miura.96

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三浦小太郎(みうら・こたろう)/ 評論家、政治活動家

昭和35年、東京都生まれ。
維新政党・新風 副代表。
北朝鮮ウイグルチベット南モンゴルなどのアジアの人権問題、民族問題に関わる。
また幅広い年代の日本史を研究。
現在、アジア自由民主連帯協議会事務局長、
新しい歴史教科書をつくる会理事。


<著書>
『嘘の人権 偽の平和』高木書房、2010年
『収容所での覚醒 民主主義の堕落』高木書房、2012年
渡辺京二』言視舎〈言視舎評伝選〉、2016年
『なぜ秀吉はバテレンを追放したのか 世界遺産潜伏キリシタン」の真実』ハート出版、2019年
ドストエフスキー戦争論 『作家の日記』を読む』萬書房、2019年
漢民族に支配された中国の本質 なぜ人口侵略・ジェノサイドが起きるのか』ハート出版、2021年